姿勢制御とバランス能力の評価|実践
姿勢制御とバランス能力の低下は、様々な慢性症状の背景に潜んでいます。今回は、見立てを変えることでアプローチの幅が広がる、姿勢制御バランス評価の症例について解説します。慢性的な腰痛や下肢症状を持つ患者で、足部からのインプット低下と体幹深部筋の機能不全が複合的に関与しているケースが多いです。特に足部の微細な接地異常が上位ユニットに波及し、見逃されがちです。
症例提示
臨床でよく相談を受けるパターンとして、40代男性、デスクワーク中心のエンジニアの症例を共有します。主訴は慢性的な腰部鈍痛と、立位でのふらつき感です。過去にぎっくり腰を数回経験し、整形外科では「椎間板ヘルニア」と診断され、リハビリや薬物療法を試すも根本的な改善には至っていません。朝起きた時や長時間座った後に腰が重く、夕方には両下肢に軽い倦怠感とふらつきが出現し、歩行時の不安定感から転倒への不安も抱えています。
初回評価|従来の見方ではどうなるか
一般的な評価では、腰痛を主訴とするため、腰椎の可動域制限や殿筋群の筋力低下、ハムストリングスの短縮などを確認します。徒手検査ではSLR陽性、Kemp’s test陰性で、MMTでは殿筋群にわずかな低下(4/5)が見られる程度です。この見立てに基づき、腰部や股関節周囲の筋膜リリース、ストレッチ、体幹トレーニングなどを指導しますが、症状の根本的な改善には繋がりにくいことが多くあります。
GAPアカデミーの視点で再評価
山根悟(D.C.)が主宰するGAPアカデミーでは、痛みの局所だけでなく、身体全体の機能ユニットと神経の連動性に着目し、根本原因を探ります。
- 足部(接地)の評価: 静的立位評価では両足の内側縦アーチの低下と浮き指が見られ、重心動揺計では前後左右への動揺が平均値より1.5倍増加していました。歩行時も踵接地から足趾離地までの重心移動がスムーズではなく、中足部の不安定性が顕著です。足底神経、脛骨神経の機能低下を疑います。
- 股関節(伝達)の評価: 股関節の可動域は、特に内旋で約10度の制限が見られました。中殿筋や内転筋群の出力低下があり、片脚立位保持で体幹の動揺が大きいことから、上殿神経、閉鎖神経の機能低下を疑います。
- 胸郭(制御)の評価: 呼吸パターンは胸式呼吸が優位で腹式呼吸が浅く、胸椎伸展・回旋の可動域制限、特にT6-T8レベルでの可動性低下が顕著でした。肋間神経、横隔神経の機能低下を疑います。
この症例では、足部の接地能力低下が股関節の安定性を損ない、結果として体幹深部筋や呼吸パターンに影響を与えていると推察されます。
見立ての結論|どの神経・どの構造が問題だったか
神経単位では、足底からの適切な感覚情報入力の低下(足底神経・脛骨神経由来)と、股関節周囲筋の機能不全による上位神経へのストレス(上殿神経・閉鎖神経由来)、胸郭の可動性低下による自律神経系への影響が複合していました。機能ユニットの観点からは、下位ユニット(足部)の機能不全が中間ユニット(股関節)の伝達を妨げ、上位ユニット(胸郭)の制御能力にまで影響を及ぼしていました。痛みの局所のみへのアプローチでは根本原因が改善されず
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