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疼痛の神経可塑性|治療アプローチ

Q. 疼痛神経可塑性を再評価する際の最重要ポイントは?

A. 疼痛神経可塑性の評価では、痛みの部位だけでなく、中枢神経系の感作状態と末梢神経の滑走性・圧迫・伸張ストレスを総合的に捉える視点が不可欠です。局所治療に終始せず、広範な神経系の機能障害を特定することが、再現性のある治療へと繋がります。

慢性疼痛を訴える患者さんに対し、局所の治療を繰り返しても症状が改善しない。そのような経験はありませんか? 器質的な問題が見当たらないにも関わらず、痛みが持続するケースは、多くの治療家が直面する課題でしょう。痛みの背景には、神経系そのものの変化、すなわち「疼痛神経可塑性」が深く関与している可能性があります。この現象を理解し、適切な評価とアプローチを導入することが、「治せる治療家」への第一歩となります。

一般的な見立ての落とし穴

多くの治療家は、患者さんが訴える「痛みの場所」に原因があると見立てがちです。しかし、疼痛神経可塑性においては、この局所への固執が治療の限界を生み出します。例えば、腰痛を訴える患者に対し、腰部へのアプローチばかりを繰り返しても、症状が改善しないケースは少なくありません。これは、痛みが中枢神経系における感作(過敏化)や、末梢神経の微細な滑走障害によって引き起こされている可能性があるためです。教科書通りの解剖学的知識だけでは捉えきれない、神経系の動的な変化を見落としていることが、多くの治療家が陥る落とし穴と言えるでしょう。

また、侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛といった分類に当てはまらない、いわゆるNociplastic pain(中枢性過敏症疼痛)の概念が近年注目されています。これは、組織損傷の明確な証拠がないにもかかわらず、痛みが持続する状態を指します。このような症例に対し、炎症や組織修復を目的とした局所治療に終始することは、効果が限定的であるだけでなく、患者さんの不信感にも繋がりかねません。痛みの原因が、脳の痛みマップの変化や、脊髄における神経伝達の異常にある場合、アプローチの視点を根本から変える必要があります。

GAPアカデミーの視点|神経機能と身体連動による再評価

GAPアカデミーでは、疼痛神経可塑性を引き起こす根本原因を、神経の滑走障害、構造的なアライメント破綻、そして重力に対する身体の適応不全が複合的に関与していると捉えます。痛みの原因は、単一の要素ではなく、これらが相互に影響し合うことで、神経系が不適応な状態へと変化していくと考えるのです。

局所の炎症が収まっても痛みが残る症例では、神経の通り道に存在する微細なストレスや、身体全体の機能ユニットの連動不全が、神経系の過敏状態を維持している可能性が高いです。特に、身体の機能ユニットとして、上位(胸郭)、中間(股関節)、下位(足関節・足趾)が互いに密接に連動しています。例えば、足部の接地不良は、股関節の荷重伝達を阻害し、さらに上位の胸郭の呼吸運動や自律神経機能に影響を及ぼすことで、広範な神経ストレスを誘発する可能性があります。山根悟D.C.が提唱するこの視点では、「痛みの部位から見る」のではなく、「神経の通り道と、それを阻害する構造・重力の因子」に目を向けることを重視します。

ユニット 役割 主要部位
上位 制御と調整 胸郭(呼吸、自律神経)
中間 荷重伝達と回旋 股関節(骨盤、腰椎)
下位 接地と衝撃吸収 足関節、足趾(足底)

この機能ユニットの連動を評価し、それぞれの部位における神経への影響を特定することが、疼痛神経可塑性への効果的なアプローチに繋がります。

疼痛神経可塑性における具体的な評価手順

疼痛神経可塑性が疑われる症例では、以下の手順で評価を進めます。局所だけでなく、神経の走行全体、そして身体全体の連動性を確認することが重要です。

  1. 姿勢・動作分析:
    • 立位、歩行、座位での全体的なアライメントと重力線との関係を評価します。特に足部の接地、股関節の回旋、胸郭の拡張性を観察します。
    • 特定の動作で痛みが誘発される場合、その動作パターンを細分化し、どの関節や神経経路にストレスがかかっているかを推測します。
  2. 末梢神経の触診とモビライゼーションテスト:
    • 主要な末梢神経(例:坐骨神経、脛骨神経、腓骨神経、大腿神経、正中神経、尺骨神経、橈骨神経など)の走行に沿って触診し、圧痛、肥厚、滑走性の低下を確認します。特に神経が骨や筋肉によって絞扼されやすい部位(例:梨状筋下、腓骨頭部、肘部管、手根管)に注意します。
    • 神経モビライゼーションテスト(例:SLUMPテスト、ULNT1-3)を実施し、神経の伸張性や滑走性を評価します。例えば、SLUMPテストで膝伸展が健側と比較して30度以上制限される場合、下肢神経の滑走障害が強く示唆されます。
  3. 関節可動域(ROM)評価:
    • 胸郭、股関節、足関節を中心に、主要関節の可動域を測定します。特に、股関節の内外旋可動域が10度以下に制限されている場合、下肢から骨盤、腰椎への機能的ストレスが神経に影響を及ぼす可能性があります。
    • 脊柱の分節運動(特に胸椎、腰椎)を評価し、特定のレベルでの可動性低下が神経根に影響を与えていないかを確認します。
  4. 感覚・筋力検査:
    • デルマトームに沿った軽触覚、痛覚、振動覚、二点識別覚の検査を実施し、神経障害の有無と範囲を特定します。
    • ミオトームに沿った徒手筋力テスト(MMT)を行い、特定の神経支配筋の筋力低下を確認します。
  5. 圧痛閾値測定:
    • 痛覚計(アルゴメーター)を用いて、特定の部位の圧痛閾値を測定します。局所だけでなく、関連する神経走行上や、中枢性感作が疑われる広範な部位で閾値が50N/cm²以下に低下している場合、神経過敏状態を示唆します。
評価項目 注目点 臨床的意義
神経滑走性 末梢神経の動き 神経絞扼、伸張ストレスの有無
圧痛閾値 神経周囲の炎症・感作 局所および関連部位の神経過敏性
関節可動域 機能ユニットの連動 神経経路への構造的制限

臨床推論|なぜこの順番で見るのか

この評価手順が重要なのは、痛みの原因が「神経ストレス、構造破綻、重力適応の失敗」に集約されるというGAPアカデミーの臨床哲学に基づいているからです。局所(痛み部位)から見るのではなく、身体の土台である足部から評価を開始し、その機能不全が股関節、そして胸郭へとどのように波及し、最終的に神経経路にストレスを与えているのかを論理的に辿ります。

例えば、足部の接地不良は、下肢のアライメントを崩し、股関節の異常な回旋を誘発します。この股関節の機能不全は、骨盤の歪みや腰椎の過剰な負荷へと繋がり、坐骨神経(L4-S3の神経根から形成)や大腿神経(L2-L4の神経根から形成)といった主要な神経に滑走障害や圧迫ストレスを与える可能性があります。さらに、慢性的な神経ストレスは、末梢神経の感作を引き起こし、最終的には中枢神経系にも影響を与え、痛みの閾値を低下させ、痛みを増幅させる「疼痛神経可塑性」の状態を形成します。

山根悟D.C.は、この一連の連鎖を詳細に評価することで、単なる対症療法ではない、根本原因へのアプローチを可能にすると説きます。痛みの部位に囚われず、全身の機能連鎖を辿り、どのレベルで神経ストレスが生じているのかを特定する思考プロセスこそが、再現性のある治療へと繋がるのです。

明日の臨床から使える視点

  • 局所治療から神経アプローチへの転換: 痛みの部位だけでなく、その神経の走行全体を評価し、滑走障害や圧迫ストレスの有無を確認しましょう。
  • 痛みは結果であり、原因ではないという認識の徹底: 患者さんの訴えの裏にある神経系の変化、構造的な歪み、重力適応の不全を探る視点を持つことが重要です。
  • 神経モビライゼーションの積極的な導入: 神経の滑走性を改善することは、末梢神経の感作を軽減し、中枢神経系への影響を抑制する上で非常に有効です。
  • 患者教育の重要性: 痛みのメカニズム、特に神経可塑性の概念を患者さんに分かりやすく説明することで、不安を軽減し、治療への主体的な参加を促すことができます。
  • 姿勢と重力適応の再構築: 足部から胸郭に至る全身の機能ユニットを評価し、重力に対する身体のバランスを再構築するアプローチを取り入れましょう。

よくある質問(治療家向け)

Q. 疼痛神経可塑性の評価で見落としやすいポイントは?

A. 末梢神経の微細な滑走障害や、中枢神経系の感作状態です。特に、痛みがない部位に潜在する神経ストレスや、自律神経系の関与を見過ごしがちです。患者さんの訴えだけでなく、神経学的検査や機能評価から客観的に評価する視点が重要となります。

Q. 効果判定はどの指標で行うべきか?

A. 疼痛スケール(VAS/NRS)だけでなく、機能評価(ROM、徒手筋力テストMMT、特定の動作時の痛み)、神経学的検査所見(感覚・反射)、そして患者さんのQOL(睡眠、活動レベル)の改善度を総合的に判断します。客観的な指標と主観的な変化の両面から評価することが大切です。

Q. 鑑別診断のフローは?

A. まずはレッドフラッグを除外します。次に、侵害受容性、神経障害性、中枢性過敏症(Nociplastic pain)の各疼痛タイプを鑑別します。詳細な問診と神経学的検査、整形外科的テスト、そして画像診断情報も参考にしながら、複合的な視点で原因を絞り込んでいきます。

Q. 保存療法の適応と限界は?

A. 器質的な重篤な損傷がない限り、ほとんどの疼痛神経可塑性症例に保存療法は適応されます。しかし、進行性の神経症状や重度の神経絞扼、手術適応となる構造的破綻がある場合は、外科的介入も検討する必要があります。治療家は自身の専門範囲を理解し、必要に応じて医療連携を図ることが重要です。

Q. 他の徒手療法との使い分けは?

A. 疼痛神経可塑性に対するアプローチは、神経モビライゼーション、関節モビライゼーション、筋膜リリース、運動療法など多岐にわたります。GAPアカデミーでは、痛みの原因が「神経ストレス、構造破綻、重力適応不全」のどの要素に強く起因するかを評価し、最も効果的なアプローチを選択・統合します。単一の手技に固執せず、複合的な視点を持つことが重要です。

Q. セミナーで学べる実技内容は?

A. GAPアカデミーのセミナーでは、足部から胸郭に至る全身の機能ユニット評価、末梢神経の触診とモビライゼーション、神経の滑走性評価、そしてそれらを統合した臨床推論の実技を重点的に学びます。山根悟D.C.による直接指導のもと、明日から臨床で使える実践的なスキルを体系的に習得できます。

疼痛神経可塑性への理解を深め、アプローチの視点を転換することは、治療家としての成長に不可欠です。局所の痛みに囚われず、神経系と身体全体の連動性を見抜く「見立て」を磨くことが、「治せる治療家」への道を拓きます。より深く学びたい方は、山根悟D.C.が主宰する月3回開催のGAPアカデミーセミナーで、実践的な評価・治療スキルと臨床推論を体系的に習得できます。教科書の先に広がる、もう一段階深い治療の世界で、あなたの臨床を大きく変えませんか。

GAPアカデミーのセミナー情報

理論と技術を確立でき治せる柔道整復師・鍼灸師・セラピストを育てるセミナー(GAP理論に基づいたカイロプラクティック技術指導)

主宰: 山根悟(D.C.(Doctor of Chiropractic))

開催: 月3回のセミナーを開催しています

治療方法に困っているセラピスト・国家資格保持者の方は、ぜひ一度サイトをご覧ください。

🌐 https://www.japan-gap-association.jp

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