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腱板損傷の診察と非侵襲的アプローチ

Q. 腱板損傷を再評価する際の最重要ポイントは?

A. 腱板損傷の評価では、単なる局所痛に留まらず、肩甲帯の安定性に関わる神経支配の評価と、機能ユニット全体での連動性を確認することが重要です。特に上位胸郭の機能不全と足部からの影響を見落とさない視点が求められます。

多くの治療家が、腱板損傷と診断された患者の肩関節痛や可動域制限に対し、局所へのアプローチに終始し、症状が改善しないケースに直面しています。特に慢性化し、何度施術しても一時的な緩和に留まる症例では、見立ての限界を感じることも少なくありません。教科書通りの評価だけでは、なぜ改善しないのか、その根本原因にたどり着けないと悩む治療家も少なくないのではないでしょうか。山根悟D.C.が主宰するGAPアカデミーでは、こうした臨床の問題提起に対し、より深く、再現性のある評価の視点を提供しています。

一般的な見立ての落とし穴

腱板損傷に対する一般的な見立てでは、疼痛部位である肩関節周囲の腱組織や関節包、滑液包に焦点を当てがちです。整形外科的テストで陽性反応が出れば、それを損傷部位の特定とみなし、その局所への施術や運動指導を行うことが一般的でしょう。しかし、この「痛みの場所=原因」という単純な図式は、しばしば臨床の場で限界を迎えます。例えば、棘上筋の機能不全が確認されても、なぜ棘上筋にストレスがかかっているのか、その上位・下位の連動性や神経支配の問題まで深く掘り下げることが見落とされやすい点です。

また、肩関節の可動域制限を解消するために、肩甲上腕関節のみにアプローチすることも、一般的な落とし穴の一つです。肩甲骨の動きや胸郭の柔軟性が十分に評価されず、結果として肩関節への負担が軽減されないまま、症状が再発したり慢性化したりするケースを多く経験します。これは、教科書的な知識だけではカバーしきれない、個々の身体の連動性を見落としている状態と言えるでしょう。

GAP理論の視点|身体の連動性で再評価する

GAPアカデミーが提唱する神経構造アプローチでは、痛みは結果であり、その原因は身体全体の連動性の破綻にあると考えます。腱板損傷のような肩関節の問題も、単なる局所の問題として捉えるのではなく、身体を構成する機能ユニットの連動性、特に神経の通り道と構造的なストレスに注目して再評価します。

人体は、上位ユニット(制御:胸郭・呼吸・自律神経)、中間ユニット(伝達:股関節・荷重・回旋)、下位ユニット(接地:足関節・足趾・支持・衝撃吸収)の3つの機能ユニットが密接に連携しています。肩関節は上位ユニットである胸郭と密接な関係にあり、胸郭の機能不全は肩甲骨の安定性や動きに直接影響を及ぼします。また、下位ユニットである足部からの接地情報や、中間ユニットである股関節からの運動連鎖も、肩関節の動態に大きく関与します。

このため、評価の優先順位は、局所からではなく、身体の土台である足部から始まり、股関節、そして胸郭へと進みます。腱板損傷の症例においても、まずは足部からの荷重バランス、股関節の回旋運動、そして胸郭の呼吸運動や脊柱の柔軟性を評価することで、肩関節への負担を増大させている根本原因を特定することが可能になります。神経の滑走性、圧迫、伸張ストレスといった視点から、特定の神経がどのように機能不全を起こしているのかを突き詰めていくことが、「治せる治療家」への第一歩となります。

腱板損傷における具体的な評価手順

腱板損傷の評価では、単に痛みの部位だけでなく、その周辺の神経支配と機能ユニットの連動性を詳細に確認します。以下にGAPアカデミーが推奨する評価手順を示します。

  1. 全身姿勢と重心の評価:
    • 立位・座位でのアライメントを確認し、左右の重心偏位、肩甲骨の高さや内転・外転の差を視診します。
    • 特に、患側への荷重回避や、体幹の側屈・回旋パターンが肩関節に与える影響を考察します。
  2. 足部・股関節機能の評価:
    • 足底の接地圧分布、アーチの評価、歩行時の足部の動的アライメントを確認します。
    • 股関節の屈曲、伸展、内旋、外旋の可動域を評価し、特に回旋制限が体幹や肩甲帯に与える影響を推測します。
  3. 胸郭・頸椎機能の評価:
    • 胸椎の伸展・回旋可動域、肋骨の呼吸時可動性(特に上部胸郭)を評価します。
    • 頸椎の可動域制限や、C5-T1レベルの神経根症状の有無を鑑別します。
    • 胸郭の制限は肩甲骨の上方回旋を阻害し、肩峰下インピンジメントを引き起こしやすくなります。
  4. 肩甲帯アライメントと運動連鎖の評価:
    • 静的アライメント: 肩甲骨内縁と脊柱との距離、肩甲骨の傾斜(チルト)、翼状肩甲の有無を評価します。
    • 動的アライメント: 腕の挙上・外転時の肩甲上腕リズムを観察します。特に肩甲骨の過剰な下方回旋や内転、または上方回旋不足は腱板への負担を増大させます。
    • 神経支配の確認:
      • 肩甲上神経 (Suprascapular nerve): C5-C6神経根由来。棘上筋、棘下筋を支配し、肩甲切痕や棘窩切痕での絞扼が筋力低下や萎縮を引き起こす可能性があります。
      • 腋窩神経 (Axillary nerve): C5-C6神経根由来。三角筋、小円筋を支配し、上腕骨外科頸骨折や四辺形間隙での絞扼リスクがあります。
      • 長胸神経 (Long thoracic nerve): C5-C7神経根由来。前鋸筋を支配し、その機能不全は翼状肩甲を引き起こし、肩甲骨の安定性を著しく損ないます。
      • これらの神経の滑走性や圧痛の有無を注意深く触診・評価します。
  5. 腱板筋群の徒手筋力テスト (MMT) と疼痛誘発テスト:
    • 棘上筋 (外転、C5)、棘下筋・小円筋 (外旋、C5-C6)、肩甲下筋 (内旋、C5-C7) のMMTを施行し、筋力低下や疼痛の有無を確認します。
    • Hawkins-Kennedyテスト、Neerテスト、Empty Canテストなどの疼痛誘発テストも行い、腱板損傷の可能性と程度を評価します。

これらの評価を通じて、単なる腱の損傷だけでなく、その背景にある神経の機能不全や身体全体の構造的なアンバランスを特定することが、「治せる治療家」への鍵となります。

臨床推論|なぜこの順番で見るのか

GAPアカデミーでは、なぜ肩関節の痛みに対し、足部から評価を始めるのか、その臨床推論を重視します。身体は一つの統合されたシステムであり、特に荷重関節である足部や股関節の機能不全は、その上位にある脊柱や肩甲帯に代償的なストレスを生み出します。例えば、足部の過回内が股関節の内旋を促し、それが体幹の回旋制限や胸郭の柔軟性低下を引き起こし、最終的に肩甲骨の適正な動きを阻害し、腱板に過剰な負荷をかけることがあります。

また、神経支配の視点は不可欠です。腱板筋群はC5-C7レベルの神経根から支配を受けるため、頸椎や上位胸椎(特にT1-T4レベルの交感神経節)の機能不全は、直接的に筋力低下や疼痛、機能障害を引き起こす可能性があります。山根悟D.C.は、痛みの部位に囚われず、どの神経が、どの部位で、どのようなストレス(圧迫、伸張、滑走不全)を受けているのかを特定することの重要性を説きます。この体系的な臨床推論が、再現性のある施術へと繋がり、「治せる治療家」を育てるGAPアカデミーの核心です。

明日の臨床から使える視点

  • 局所痛にとらわれず、全身の機能ユニットを評価する: 肩関節痛でも、必ず足部、股関節、胸郭、頸椎の連動性を確認してください。
  • 神経支配と滑走性に注目する: 腱板筋群を支配する神経(肩甲上神経、腋窩神経、長胸神経など)の走行と絞扼ポイントを意識し、神経学的検査をルーティンに含めましょう。
  • 胸郭の機能不全を詳細に評価する: 呼吸パターン、肋骨の可動性、胸椎の伸展・回旋制限は、肩甲骨の動きと密接に関連しています。
  • 肩甲骨の動的アライメントを重視する: 腕の挙上・外転時の肩甲上腕リズムを観察し、異常パターンがあればその原因を上位・下位ユニットに求めましょう。
  • 評価の優先順位を意識する: 足部→股関節→胸郭→肩甲帯の順に、原因を辿る思考プロセスを習慣化することで、根本的なアプローチが可能になります。

よくある質問(治療家向け)

Q. 腱板損傷の評価で見落としやすいポイントは?

A. 肩関節周囲の神経絞扼と、胸郭の可動性、特に呼吸機能との関連です。上位胸椎の機能不全は肩甲骨の運動連鎖に影響し、神経ストレスを増大させることが多いため、詳細な評価が必要です。

Q. 効果判定はどの指標で行うべきか?

A. 疼痛スコア(VAS)、可動域(ROM)、日常生活動作(ADL)の改善に加え、特定の徒手検査やMMTでの筋力回復、神経滑走性の変化を指標とします。客観的な指標を複数用いることが重要です。

Q. 鑑別診断のフローは?

A. まず神経学的所見の有無を確認し、その上で肩関節周囲の構造的損傷(腱板、関節唇など)を鑑別します。頸椎由来の放散痛や胸郭出口症候群との区別も重要で、必要に応じて画像診断も考慮します。

Q. 保存療法の適応と限界は?

A. 腱板の完全断裂でなく、機能障害が主に疼痛や可動域制限によるものであれば保存療法が適応されます。ただし、日常生活に支障をきたす重度の筋力低下や疼痛が続く場合は、手術適応も検討します。

Q. 他の徒手療法との使い分けは?

A. 他の徒手療法と競合するものではなく、GAP理論はあくまで「見立て」の深さを提供します。既存の手技を活かしつつ、神経・構造・重力の視点から原因を特定し、より効果的なアプローチを選択するための指針となります。

Q. セミナーで学べる実技内容は?

A. 足部、股関節、胸郭、そして肩甲帯・上肢における神経構造アプローチの実技を体系的に学びます。触診、徒手検査から評価、そして具体的な施術手技まで、明日から臨床で使える実践的な内容です。

腱板損傷の症例で「治せる治療家」となるためには、局所的な視点から一歩踏み出し、神経、構造、そして重力適応の全体像から問題を捉え直すことが不可欠です。GAPアカデミーでは、山根悟D.C.が体系化したこの神経構造アプローチに基づき、臨床推論を深めるための月3回開催のセミナーを提供しています。教科書の先にある、もう一段階深い見立てを習得し、患者さんの未来を変える治療家を目指しませんか。

GAPアカデミーのセミナー情報

理論と技術を確立でき治せる柔道整復師・鍼灸師・セラピストを育てるセミナー(GAP理論に基づいたカイロプラクティック技術指導)

主宰: 山根悟(D.C.(Doctor of Chiropractic))

開催: 月3回のセミナーを開催しています

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🌐 https://www.japan-gap-association.jp

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