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【痛みの生理学】しびれ、麻痺の違いと発痛物質の種類を山根悟が解説

痛みについて

痛みは不快な感覚性、情動性の体験で、それは組織損傷を伴うものと、そのような損傷があるように表現されるものがあります。「そのような損傷があるように表現されるものがある」というのは、「組織障害が治癒しても感じる」あるいは「組織障害が非常に軽いのに起こる疼痛がある」ということを意味しています。慢性痛と言われるものは痛みと言う症状ではなく、痛み自体が疾患であると言えるのです。

痛みは他人の体験?

痛みというのは「他人の体験」です。他人の体験を診断したり治療したりするというのはどのようなことなのでしょうか?

他人の体験を診断したり治療したりするには、まず痛みは診ることも図ることも出来ません。ですから痛みのメカニズムしかないのです。痛みのメカニズムに沿って診断するしか方法はないのです。

痛みの治療

痛みの治療は、痛みの電気回路に介入する薬剤です。急性痛は組織損傷(あるいは損傷しているかもしれないという恐れ)に対する警告なのです。このメカニズムはすでにわかっています。その薬剤とは局所麻酔か消炎鎮痛剤です。慢性痛は末梢性感作や中枢性感作を受けていて、下降性疼痛抑制系も弱くなっていることが考えられます。もはやこの時点では急性痛の方法では通用しません。

しかし、急性痛と反省痛が混在することはよく見受けられます。しかし、損傷の治療と痛みの治療は別問題になるので理解するようにしましょう。

今後私たちは「慢性痛」をどのように克服するかが焦点となります。急性痛は比較的容易に除去することが出来ます。急性痛のうちに除痛することが重要なのです。

一般的に言われている「神経が圧迫されているから痛い」「軟骨や椎間板・半月板が傷んでいるから痛い」「骨棘が神経を刺激して痛い」といったものは科学的事実に基づいたものではありません。ですが、患者さん自身はこのようなことを信じています。私たち治療家は、科学的事実に基づいた治療を行なわなければなりません。

痛みのセンサー

痛みというのは不快な感覚であり、不快な情動体験です。人にとって決して喜ばしいものではないことはわかりませんよね?害ばかりかと言えばそうとも言えません。例えば人体の組織が何らかの外的、あるいは内的な原因で損傷されると、そこを修復する為に炎症が起こります。

その結果、腫脹、熱感、痛みが出ます。そこで人間は身体の不具合を察知するのです。もし、脊髄疾患で痛覚に異常があったとすれば、痛みを感じない為かより重篤な状態になっていくのが普通です。

人は痛みを感じるとによって、自分の身体を正常に維持し、外敵から自己を守っているのです。

ケガをすると、最初に皮膚(真皮)にある「痛みセンサー」が反応し、その情報が末梢神経を通って脊髄神経に伝達され、最終的に脳で「痛み」として認識されます。脳はその情報から痛みの部位、鈍痛、鋭痛など痛みの質と痛みの強さを判定します。暑いものに触れた時や間違って画鋲を踏んだ時に、手足を反射的にひっこめる等逃避行堂を取るのもこの情報伝達が元になっています。

但し動物の場合は、センサーの情報に従って傷が癒えるまで休みますが、人間の場合は大脳が発達しているので逃避反射を抑えることができます。スポーツなどの試合や仕事、時にはレジャーの為に無理を押して活動し続けて結果的に症状が重症化してしまうこともあります。

発痛物質とその種類

生体に、科学的、温熱的、機械的刺激などの侵害刺激が加わると組織が障害され、その結果化学物質が産生されます。この物質が神経自由終末に作用することによって痛みが起こると考えられています。

ある化学物質が神経自由週末を興奮させ、痛みを誘発した場合にその物質を発痛物質と呼びます。主に発痛物質が出る順番は以下の通りです。

  1. 機械的刺激や熱、アルカリの刺激を受けると細胞が傷つく
  2. 傷ついた細胞内からカリウムが放出され、痛みを感じやすくする「プロスタグランジン」や「ロイコトリエン」といった身体の働きを調整する物質が作られる
  3. 神経からはサブスタンスPという痛みの増強物質が放出され、患部の痛みや腫脹、発赤などが増強
  4. 血液中の肥満細胞からは「セロトニン」、血小板からは「ヒスタミン」といった更なる痛み物質が誘発
  5. 痛みセンサーはますます興奮して痛みを拡大させる

ポリモーダル侵害受容器はその名が示す通り(poly:多様な)(mode:様式)を持っています。このポリモーダル受容器は未分化で原始的な受容器なのです。機械的、科学的、熱刺激のいずれにも反応します。

分布範囲は全身に及びますが、その中でも主に「真皮」「筋膜」「関節包」「靭帯」「骨膜」などコラーゲンを多く含む組織に集中しています。局所の虚血、酸素欠乏を受け興奮をして、痛みの信号を脳へ送ります。

また、炎症などの組織の変化による修飾作用を受けて、さらに興奮を増す受容器です。

私たちの取り扱う「痛み」はこのポリモーダル侵害受容器を抜きにして語れません。痛みの需要期の存在する膠原繊維(コラーゲン)の豊富な部分でもある「真皮」「筋膜」「関節包」の痛みセンサーが「酸素不足」となって痛みのセンサーにスイッチが入ります。

ですからこの3つの部分に対して酸素供給をすることができれば痛みの除去は容易なのです。

痛み・しびれ・麻痺の違い

痛みとは、損傷部位と脳との電気信号のやり取りの結果としての自覚症状です。何かにぶつけたり転んだりした衝撃によって擦過傷を負う。ナイフや刃物で作業中に切り傷を負う・・・その瞬間、少しの間があり時間が経過することによって痛みを感じてきます。

しびれの場合は、医師を含め私たちはしびれと麻痺を同じ分野、感覚として扱っていませんか?しびれは「ビリビリする」「サワサワする」など表現には様々ありますが、痛みと同様で本人にしか分からない自覚症状です。しばらくすると、手技や時間などによって元の状態に戻ることも可能です。

麻痺の場合は「動かない」「患部が痩せる・萎縮する」といった脳に何らかのトラブルが起きて、後遺症による麻痺は深刻な場合もあります。度合いにもよるでしょうが、ともかく、ある種のリハビリが必要となってきます。そして上手く進んでも完全に元の状態に戻ることは保障出来ません。

痛みやしびれに対して括れたとしても。麻痺は別次元のものであることを再認識しなければなりません。

痛み・しびれ・麻痺

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