四十肩・五十肩の臨床|肩関節求心位の評価とアプローチ

Q. 五十肩の評価を再評価する際の最重要ポイントは?
A. 痛みの局所だけでなく、肩関節の求心位を司る神経・構造・重力バランスを多角的に評価することです。特に肩甲上神経、腋窩神経の滑走不全と、胸郭・股関節・足部の連動性に着目し、機能ユニット全体の破綻を見抜く視点が不可欠です。
五十肩と診断された症例で、肩関節への局所的アプローチだけでは改善が頭打ちになる経験はありませんか?可動域制限や夜間痛がなかなか改善しない患者に対し、もう一歩踏み込んだ評価の必要性を感じている治療家は多いはずです。教科書通りの知識だけでは対応しきれない症例に直面した時、私たちはどのように見立てを深めるべきでしょうか。
一般的な見立ての落とし穴
五十肩の診断は通常、疼痛性肩関節可動域制限を主訴とする疾患であり、炎症期、拘縮期、回復期に分けられます。多くの治療家は、肩関節周囲の筋群(腱板筋、三角筋など)や関節包の炎症、線維化に注目し、局所のストレッチや筋力強化、温熱療法などを中心にアプローチします。
しかし、この「痛みの場所=原因」という単純な見立てには限界があります。例えば、肩関節のインピンジメント症候群と診断されても、真の原因が肩甲骨の不安定性や胸郭の機能不全にある場合、局所治療だけでは根本的な解決には至りません。教科書通りの評価では、肩関節周囲の痛みや可動域制限の原因を、棘上筋腱炎、滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎といった局所的な病態に限定しがちです。しかし、なぜそれらの病態が生じたのか、という「なぜ」を深掘りしなければ、再現性のある施術には繋がりません。特に、肩関節の求心位を維持するための神経支配や、体幹との連動性を見落とすことが、改善を阻害する大きな要因となります。
GAP理論の視点|神経・構造・重力で再評価する
GAPアカデミーでは、痛みは結果であり、原因ではないという哲学に基づき、人体を「神経」「構造」「重力」の3軸で評価します。五十肩においても、肩関節の求心位が破綻している真の原因をこの3軸から探ります。山根悟(D.C.)が主宰するGAPアカデミーでは、この神経構造アプローチの体系化を図り、「治せる治療家」を育てることをミッションとしています。
- 神経: 肩関節周囲の筋群を支配する神経(例: 肩甲上神経、腋窩神経、筋皮神経、胸背神経など)の滑走不全や圧迫ストレスがないか。特に、頚部から肩甲帯、上腕へと走行する神経経路に問題がないかを確認します。
- 構造: 肩甲骨、胸郭、鎖骨の連動性、そして肩関節と体幹、さらには股関節・足部とのキネティックチェーンの破綻。肩関節の求心位維持には、肩甲上腕リズムが重要ですが、その前提となる胸郭の安定性や呼吸機能も構造の一部です。
- 重力: 日常生活での不良姿勢、特定の動作パターンによる荷重ストレス、重心バランスの偏り。例えば、デスクワークでの猫背姿勢が胸郭の可動性を制限し、結果として肩関節への負担を増大させるケースなど、重力に対する適応の失敗を見立てます。
さらに、GAP理論では身体を「上位(胸郭)」「中間(股関節)」「下位(足関節・足趾)」の機能ユニットとして捉え、評価の優先順位を「足部→股関節→胸郭」とします。五十肩の症例であっても、局所である肩関節からではなく、まずは足部からの接地、股関節での荷重伝達、そして胸郭での制御機能を確認することで、根本的な原因を見立てる視点を提供します。この臨床推論は、柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、カイロプラクター等の国家資格保持者向けに、より深い洞察をもたらします。
五十肩の評価における具体的な評価手順
五十肩の症状を訴える患者に対し、GAP理論に基づいた評価は、局所的な肩関節だけでなく、全身の連動性、特に神経の滑走性と構造的な安定性に焦点を当てます。
- 足部・下肢の評価(接地機能)
- 足底のアーチ構造、足趾の接地状況を確認します。特に内側縦アーチの破綻や外反母趾の有無は、下肢からの荷重伝達に影響を及ぼし、上位構造への代償を引き起こします。
- 片脚立位でのバランス能力や、下肢の回旋アライメント(脛骨の外旋など)を評価します。
- 股関節の評価(伝達機能)
- 股関節の可動域(屈曲、伸展、外転、内転、内外旋)を評価します。特に股関節の内旋可動域制限は、体幹の回旋運動に影響し、胸郭や肩甲骨の運動に代償を引き起こすことがあります。正常な股関節屈曲は120度、外旋は45度程度が目安です。
- 股関節周囲筋(大殿筋、中殿筋、腸腰筋など)の筋力評価(MMT)を行い、荷重伝達の安定性を確認します。
- 胸郭・体幹の評価(制御機能)
- 胸郭の可動性(呼吸時の膨隆、回旋、側屈)を評価します。特に胸椎の伸展制限や回旋制限は、肩甲骨の運動に直接影響を与え、肩甲上腕リズムの破綻を招きます。例えば、胸椎伸展制限が10度以下の場合、肩甲骨の挙上・上方回旋が阻害されやすくなります。
- 呼吸パターン(腹式呼吸、胸式呼吸)を確認し、横隔膜機能や自律神経系の状態を推測します。
- 体幹筋(腹横筋、多裂筋など)の安定性テストを行います。
- 肩甲帯・上肢の神経評価
- 肩甲上神経 (Suprascapular nerve): C5-C6由来。棘上筋、棘下筋を支配。肩甲切痕、棘窩切痕での絞扼がないか、肩甲骨内縁や棘下窩での圧痛、触診時の滑走性を確認します。肩関節外転初期の痛みや、外旋筋力低下(MMTでグレード3以下など)は、この神経へのストレスを示唆します。
- 腋窩神経 (Axillary nerve): C5-C6由来。三角筋、小円筋を支配。上腕骨外科頚周囲や四辺形間隙(Quadrangular space)での絞扼がないか、三角筋の萎縮や肩関節外転時の疼痛、筋力低下を確認します。
- 筋皮神経 (Musculocutaneous nerve): C5-C7由来。上腕二頭筋、烏口腕筋、上腕筋を支配。烏口腕筋の緊張や、上腕二頭筋の触診、肘関節屈曲時の抵抗運動で評価します。
- 長胸神経 (Long thoracic nerve): C5-C7由来。前鋸筋を支配。肩甲骨の翼状をチェックし、前鋸筋の機能不全がないか確認します。
- 胸背神経 (Thoracodorsal nerve): C6-C8由来。広背筋を支配。広背筋の過緊張や、肩関節内転・伸展時の抵抗運動で評価します。
これらの神経の走行に沿って、圧痛点や滑走性の低下、伸張ストレスを誘発する動き(SLRテストの変法など)を確認します。
- 肩関節の求心位評価
- 肩関節自動・他動運動時の肩甲上腕リズム(肩関節外転180度に対し、上腕骨が120度、肩甲骨が60度程度の上方回旋)の破綻を確認します。
- 肩関節のインピンジメントテスト(Neerテスト、Hawkins-Kennedyテストなど)を実施し、痛みの誘発部位と、それが神経ストレスによるものか、構造的な問題によるものかを鑑別します。
- 肩甲骨の安定性テスト(Scapular Assistance Test, Scapular Retraction Test)を行い、肩甲骨周囲筋の機能不全を評価します。
臨床推論|なぜこの順番で見るのか
五十肩の症状を持つ患者に対し、なぜ局所である肩関節から見ず、足部・股関節・胸郭、そして神経の評価を優先するのか。この臨床推論こそが、GAP理論の核心であり、山根悟(D.C.)が提唱する「治せる治療家」への道です。
人間の身体はキネティックチェーンとして機能しており、下位ユニットの機能不全は上位ユニットへの代償を必ず引き起こします。例えば、足部の接地が不安定であれば、股関節での荷重伝達が破綻し、その結果、胸郭の安定性が損なわれます。胸郭の安定性が失われれば、肩甲
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