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椎間板ヘルニアの保存療法|治療家ができる神経評価

椎間板ヘルニアの症例で、腰部の痛みやしびれを訴える方がいらした場合、局所だけでなく足部の接地機能や股関節の伝達機能から評価することで、見落とされがちな神経ストレスを発見し、再現性のあるアプローチへと繋がります。

診断名に囚われず、神経・構造・重力の3軸で全身を評価することが、患者さんの症状改善に大きく貢献します。

椎間板ヘルニアの評価において、多くの治療家が診断名に終始し、腰部への直接的なアプローチに悩むケースは少なくありません。教科書通りの評価では改善が見られない慢性症例に対し、どのように見立てを変え、再現性のある施術へと繋げていくのか。今回は、臨床でよく相談を受ける椎間板ヘルニアの症例を通して、GAPアカデミーが提唱する神経構造アプローチの視点と臨床推論を共有します。

症例提示

臨床でよく相談を受けるパターンとして、以下のような症例があります。

患者プロフィール: 40代男性、システムエンジニア(デスクワーク中心)。
主訴: 慢性的な腰痛に加えて、左臀部から大腿後面、下腿外側にかけてのしびれと痛み。
既往歴: 半年前に整形外科でL4/5椎間板ヘルニアと診断され、牽引や薬物療法、一般的なリハビリを継続するも改善が見られず、当院にご相談。
症状詳細: 長時間の座位や前屈動作で症状が増悪し、夜間も熟睡できないことがあるという。特に朝方に症状が強く出る傾向が見られました。SLRテストは左側で30度から臀部痛と下肢のしびれを誘発し、右側は80度まで可能でした。

初回評価|従来の見方ではどうなるか

この症例に対し、多くの治療家はまず整形外科診断であるL4/5椎間板ヘルニアに注目し、腰部へのアプローチを検討するでしょう。一般的な初回評価では、以下のような流れが考えられます。

  • 腰椎の可動域(ROM)測定と、前屈・後屈・側屈・回旋における痛みの誘発確認。
  • SLRテスト、FNSテストなどの神経根刺激症状を確認する整形外科的テスト。
  • 腰部、殿部、ハムストリングスなどの筋緊張の触診。
  • これらの結果から、L4/5レベルの神経根圧迫を想定し、腰部周囲筋のリリースや体幹トレーニング、ストレッチ指導といった局所的なアプローチが中心となることが一般的です。しかし、このアプローチだけでは症状の根本改善に至らないケースが多々あります。

GAP理論で再評価|神経・構造・重力の3軸

山根悟(D.C.)が主宰するGAPアカデミーでは、痛みを結果と捉え、神経、構造、重力の3軸で全身を評価します。この症例においても、診断名に囚われず、この3軸と機能ユニット(下位・中間・上位)の連動性に着目して再評価を進めました。

評価優先順位と具体的な所見

  1. 足部(下位ユニット:接地)
    • 所見: 立位での荷重時、左足のアーチ低下と外側荷重の傾向が顕著でした。足関節の背屈ROMは右25°に対し左15°と著しい制限があり、足底筋群や腓骨筋に強い硬結が見られました。
    • 臨床推論: 足部の接地機能不全は、歩行時や立位での衝撃吸収能力を低下させ、下腿からハムストリングス、さらに骨盤へと不適切なストレスを伝達させます。これにより、脛骨神経や腓骨神経の滑走不全、および下肢全体の連動性低下を引き起こしていると考えられます。
  2. 股関節(中間ユニット:伝達)
    • 所見: 左股関節の内旋ROMは右40°に対し左20°と可動域制限が強く、深層外旋六筋群に著明な過緊張が触知されました。仙腸関節の動きも左側で制限が見られました。
    • 臨床推論: 股関節の可動域制限は、骨盤の安定性や荷重伝達機能に影響を与え、腰椎への負担を増大させます。特に深層外旋六筋の過緊張は梨状筋症候群様の症状を引き起こし、坐骨神経への圧迫ストレスを助長している可能性が高いです。
  3. 胸郭(上位ユニット:制御)
    • 所見: 長時間のデスクワークによる猫背姿勢が定着しており、胸郭の拡張制限や呼吸パターンの乱れが見られました。
    • 臨床推論: 上位ユニットである胸郭の機能不全は、呼吸や自律神経の制御に影響を及ぼすだけでなく、体幹の安定性にも関与します。これが下位ユニットへの代償を強いることで、全身のバランスが崩れ、慢性的な腰部ストレスの一因となっていると推測されます。

この3軸評価を通して、痛みの部位である腰部だけでなく、全身の機能連関から問題の本質を捉えることが、GAP理論の核心です。

GAP理論における3軸評価のポイント

  • 神経ストレス: 神経の滑走不全、圧迫、伸張ストレスを特定の神経単位で評価します。
  • 構造破綻: 関節の可動域制限、筋の連動性低下、姿勢の歪みを全身の連関から捉えます。
  • 重力適応の失敗: 荷重バランスの崩れ、身体軸の不安定性が、各ユニットにどのような影響を与えているかを評価します。

見立ての結論|どの神経・どの構造が問題だったか

この症例における見立ての結論は、L4/5椎間板ヘルニアという診断があるものの、主たる神経ストレスは腰部神経根だけでなく、以下の複合的な要因が慢性化の原因となっていたと推測されます。

  • 神経単位での問題: 左足部の接地機能破綻からくる脛骨神経・腓骨神経の滑走不全、および左股関節の機能不全による仙骨神経叢(特に坐骨神経)への複合的な圧迫・伸張ストレス。
  • 機能ユニットの破綻ポイント: 下位ユニット(足部)の不安定性が中間ユニット(股関節)に過剰な負担をかけ、結果的に腰部への代償的なストレスを常時かけていたこと。特に左足関節の背屈制限が、歩行時や座位での下肢への負担を増大させ、腰部症状を誘発・悪化させていました。
  • 慢性化の理由: 痛みの場所である腰部への直接的なアプローチだけでは、足部や股関節といった遠隔地の根本的な機能不全が改善されず、神経ストレスが継続していたため、症状が慢性化し、改善が見られなかったと考えられます。

アプローチの方向性

GAPアカデミーの視点では、この症例に対して局所(腰部)への直接的な施術だけでなく、以下の優先順位で根本原因へのアプローチを設計します。

  1. 足部の接地機能改善: 左足関節の背屈ROM改善と足部のアーチ機能回復を目指します。足底筋群や下腿三頭筋、腓骨筋へのリリースと、足関節のモビライゼーションを実施します。
  2. 股関節の伝達機能改善: 左股関節周囲筋、特に深層外旋六筋や内転筋群のリリースと、股関節の可動域改善を図ります。仙腸関節の動きの改善も同時に行います。
  3. 神経モビライゼーション: 脛骨神経、腓骨神経、坐骨神経といった下肢の主要な神経に対する滑走性を改善する手技を重点的に行い、神経への圧迫・伸張ストレスを解放します。
  4. 胸郭の制御機能改善: 胸郭の可動性を改善し、適切な呼吸パターンを再教育することで、自律神経系の調整と体幹の安定性を



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