椎間板ヘルニアの保存療法|治療家ができる神経評価

Q. ヘルニアの評価でよく見る臨床パターンは?
A. 椎間板ヘルニア様の症状は、局所の圧迫だけでなく、神経の滑走不全や構造的連動の破綻が原因で発生します。特に足部からの重力適応不全が上位ユニットに影響を与えるケースが頻繁に見られます。
椎間板ヘルニアと診断された患者さんの症状が改善しない、あるいは再発を繰り返すという相談は、臨床現場でよく聞かれます。痛みやしびれが局所に集中しているように見えても、その根本原因は教科書的な見方だけでは捉えきれないことがあります。本稿では、ヘルニアの評価でよく相談を受ける症例をもとに、GAP理論を用いた見立ての変遷を共有します。
症例提示
臨床でよく相談を受けるパターンとして、以下のような症例があります。市川市在住の40代男性、デスクワーク中心のシステムエンジニア。主訴は「腰から右下肢にかけての強い痛みとしびれ」で、特に立位や座位での持続が困難。歩行も5分以上で悪化します。整形外科ではL5/S1の椎間板ヘルニアと診断され、牽引療法や電気治療、投薬を受けていましたが、症状に大きな変化は見られませんでした。過去にぎっくり腰の既往が数回あり、慢性的な腰の重だるさは以前から感じていたとのことです。
初回評価|従来の見方ではどうなるか
多くの治療家がこの症例を見た場合、まずL5/S1レベルの神経根症状を疑い、SLRテストやFNSテスト、デルマトーム・ミオトームの検査を行うでしょう。ヘルニアの診断があれば、局所の炎症や圧迫の軽減を目的としたアプローチが中心となるかもしれません。しかし、この症例のように一般的なアプローチで症状が改善しない場合、局所のみに焦点を当てた見方では限界があると感じるはずです。
GAP理論で再評価|神経・構造・重力の3軸
GAP理論では、痛みは結果であり、原因ではありません。この症例を神経・構造・重力の3軸で再評価します。
- 足部(接地)の評価:
まず、患者さんの足部アライメントを確認すると、右足の扁平足傾向と外反母趾が顕著でした。立位での重心動揺も大きく、特に右足への荷重時不安定性が認められました。足関節の背屈可動域は右が10度、左が15度と右に制限があり、距骨下関節の動きも硬く、適切な衝撃吸収と支持機能が果たせていないと判断しました。
- 股関節(伝達)の評価:
次に、股関節の評価です。右股関節の屈曲・内旋可動域に制限があり、特に内旋は左右差が大きく、左が40度に対し右は25度でした。これは、足部からの不安定性を代償するために股関節周囲筋が過緊張している可能性を示唆します。股関節の適切な回旋運動が阻害されることで、骨盤や腰椎への不必要なストレスが増加していると考えられます。
- 胸郭(制御)の評価:
最後に、胸郭の評価です。座位での姿勢を見ると、軽度の円背と右肩の下制が認められました。呼吸パターンも浅く、腹式呼吸が不十分で胸郭の拡張性が乏しい状態でした。これは自律神経系の乱れや、上位ユニットからの適切な制御ができていない可能性を示唆します。胸郭の動きが制限されることで、腰椎への負担が増大し、神経系のストレスも高まります。
この症例では、L5/S1レベルの神経根症状が主訴ですが、神経単位で詳細に評価すると、右の坐骨神経(特に腓骨神経成分)の滑走不全が疑われました。SLRテストでは30度で右下肢後面に強い痛みを訴え、足関節背屈で増強しました。
見立ての結論|どの神経・どの構造が問題だったか
この症例における見立ての結論は、以下の通りです。
- 神経ユニット: L5/S1神経根だけでなく、右坐骨神経(特に腓骨神経成分)の滑走不全が、足部からの重力ストレスと股関節の機能不全によって引き起こされている。神経の圧迫だけでなく、伸張ストレスも重要な要因です。
- 機能ユニットの破綻: 最も重要な破綻ポイントは下位ユニット(足部)にありました。右足の扁平足と外反母趾が、地面からの適切な衝撃吸収と支持機能を阻害し、その代償として中間ユニット(股関節)の回旋運動に制限を生じさせていました。結果として、上位ユニット(胸郭・腰椎)への過剰な負担と神経ストレスが増大し、L5/S1レベルのヘルニア症状を誘発・悪化させていたと考えられます。
- 慢性化の理由: 局所のヘルニアに対するアプローチだけでは、根本的な重力適応の失敗と神経滑走不全が解決されず、症状の慢性化や再発を招いていたと推測されます。
アプローチの方向性
この症例に対するアプローチは、局所の痛みを取り除くことだけでなく、根本的な神経ストレスの解放と機能ユニットの再構築を目指します。まず、右足部のアーチサポートと足関節の可動域改善(特に背屈)に焦点を当て、接地機能を回復させます。次に、股関節の回旋可動域を確保し、骨盤と腰椎への負担を軽減します。最終的に
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