関節モビリゼーション グレード分類|MaitlandグレードI〜V

Q. モビリゼーショングレードを臨床で効果的に活用するための最重要ポイントは?
A. モビリゼーショングレードは、関節の機能不全を神経・構造・重力の3軸で捉え、痛みの部位だけでなく、機能ユニット全体の連動性から評価することが重要です。特に足部から胸郭への優先順位で原因を特定し、適切なグレードを選択することで、再現性のある施術に繋がります。
関節モビリゼーションのグレード分類は、関節機能障害の評価と治療に不可欠なツールです。しかし、教科書通りに適用しても症状が改善しない、あるいはすぐに戻ってしまう症例に直面し、見立てに限界を感じていませんか?表面的な関節可動域の改善に留まらず、真の原因にアプローチできていない可能性があります。
一般的な見立ての落とし穴
多くの治療家は、患者さんが訴える痛みの局所に注目し、その部位の関節可動域制限に対してモビリゼーションを適用しがちです。例えば、腰痛に対して腰椎のモビリゼーションを行う際、MaitlandグレードI〜Vの分類に基づき、動きの硬さや痛みのある方向へアプローチします。しかし、これは痛みの結果に対する対処であり、真の原因を見落としているケースが少なくありません。痛みの部位から離れた足部や股関節、胸郭といった機能ユニットの破綻が、結果として局所の関節機能不全を引き起こしている可能性を考慮しない限り、一時的な効果に留まってしまいます。
GAP理論の視点|神経・構造・重力で再評価する
GAPアカデミーでは、山根悟(D.C.)が提唱する神経構造アプローチに基づき、人体を
神経(通り道・ストレス)、
構造(関節・連動)、
重力(荷重・バランス)
の3軸で評価します。痛みは結果であり、その真の原因は「神経ストレス + 構造破綻 + 重力適応の失敗」にあると考えます。モビリゼーショングレードを単なる関節運動の改善ツールとして捉えるのではなく、この3軸評価に照らし合わせることで、より本質的なアプローチが可能になります。
特に、機能ユニット構造である
上位ユニット(胸郭:呼吸・自律神経)、
中間ユニット(股関節:荷重・回旋)、
下位ユニット(足関節・足趾:支持・衝撃吸収)
の連動性を重視します。評価の優先順位は、局所からではなく、足部(接地)→股関節(伝達)→胸郭(制御)となります。これにより、痛みの部位にとらわれず、全身の機能連鎖の中で関節機能不全の根本原因を特定し、適切なグレードのモビリゼーションを選択する視点が生まれます。
モビリゼーショングレードにおける具体的な評価手順
Maitlandのモビリゼーショングレードは、関節の動きを細分化し、痛みや可動域制限の状態に応じて適切な刺激量を選択するための指標です。以下に、各グレードの概要と、GAP理論に基づいた評価手順を示します。
| グレード | 説明 | 臨床的適用 |
|---|---|---|
| グレードI | 遊びの範囲での小さな動き。抵抗なし。 | 痛み初期、炎症期、神経系の鎮静化 |
| グレードII | 遊びの範囲から抵抗が始まる手前までの大きな動き。 | 痛み初期、炎症期、神経系の鎮静化 |
| グレードIII | 抵抗が始まる範囲から組織の抵抗が強くなる手前までの大きな動き。 | 可動域制限の改善、関節包・靭帯の伸張 |
| グレードIV | 抵抗が強くなる手前から最終域までの小さな動き。 | 可動域制限の改善、関節包・靭帯の伸張 |
| グレードV | 最終域を超えて、抵抗を乗り越える高速・小振幅の動き。(スラスト) | 関節のロック、可動域の最終改善(禁忌に注意) |
GAP理論に基づく評価は、局所からではなく、機能ユニットの連動性を重視します。
- 足部・足関節の評価(接地ユニット)
- 評価ポイント: 距骨下関節、ショパール関節、リスフラン関節の滑動性。特に距骨下関節の回内・回外制限は、脛骨の内旋・外旋に影響し、膝関節や股関節の機能不全を誘発します。
- 神経学的視点: 深腓骨神経、浅腓骨神経、脛骨神経の末梢枝の滑走性。足根管症候群のような神経絞扼がないか、ティネル徴候などで確認します。
- 適用グレード: 軽度の滑動性低下や疼痛がある場合、MaitlandグレードI〜IIで神経系の鎮静化と関節の遊びを回復させます。可動域制限が顕著であれば、グレードIII〜IVで組織の伸張を促します。
- 股関節の評価(伝達ユニット)
- 評価ポイント: 股関節の屈曲・伸展、内転・外転、内旋・外旋の可動域とエンドフィール。特に深層外旋筋群(梨状筋など)の緊張は、坐骨神経(L4-S3)の滑走障害を引き起こすことがあります。
- 神経学的視点: 大腿神経(L2-L4)、閉鎖神経(L2-L4)、坐骨神経の滑走性。神経伸張テスト(SLR、PKBテストなど)で神経の感受性を評価します。
- 適用グレード: 股関節の可動域制限が神経症状と関連する場合、MaitlandグレードIIで神経の鎮静と筋肉の緩和を図ります。関節包の硬さや癒着が疑われる場合は、グレードIII〜IVで慎重に関節包の伸張を行います。
- 胸郭・胸椎の評価(制御ユニット)
- 評価ポイント: 胸椎の回旋・側屈・屈曲・伸展。呼吸時の胸郭の拡張性。上位胸椎(T1-T4)の可動性低下は、頸椎への影響だけでなく、自律神経系の機能にも関与します。
- 神経学的視点: 肋間神経、交感神経幹の機能。胸郭出口症候群のような神経絞扼の有無も鑑別します。
- 適用グレード: 呼吸機能や自律神経系の調整を目的とする場合、痛み刺激の少ないMaitlandグレードI〜IIでゆっくりと遊びを回復させます。胸椎の可動域が著しく制限されている場合は、グレードIII〜IVで慎重に可動性を改善させます。
臨床推論|なぜこの順番で見るのか
なぜ
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